
競技かるたの始め方第四弾! 今回から具体的な決まり字を紹介していきます。最初は札の意味だとか、作者の紹介だとか、いろいろ詰め込もうと思ったのですが、無駄に長くなりそうだし、今回はあくまでも”競技かるた”の記事なので、和歌鑑賞面からの解説は省きます。
早速決まり字の紹介に移りたいのですが、その前に、前回書ききれなかった決まり字についてもう一つの大事な概念、「共札(ともふだ)」について解説させてください。競技かるたをしていても割とよく出てくる単語なので、覚えておいて損はないでしょう!
共札とは
共札とは、決まり字が途中まで同じ札のペアのことを言います。前回の決まり字の変化のところで例として出てきた、「いまは」「いまこ」の二枚は、決まり字が二文字目、つまり「いま」まで同じなので、この二枚は「共札」となります。
ここで注意してほしいのは、”共”札という名前が表す通り、共札は、二枚一組のペアという形でしか存在しない、ということです。
たとえば、百人一首の中には、「なにし」「なにはえ」「なにはが」、といった、三枚の札が存在する。三枚とも「なに」の部分まで同じなので、一見全て共札のように見えますが、実際は「なにはえ」「なにはが」の二枚しか共札とは言いません。
つまり、途中まで同じ文字であっても、三枚以上該当する札がある場合は、それらの札を共札とは言わず、二枚まで絞れた時に、初めてその二枚が共札となる、といことです。
ややこしくなっちゃいましたが、もっと具体的に言ってしまえば、
・三字決まりより長い札は例外5枚を除いて、全て共札となる相手がいる。
・二字決まりで共札があるのは二枚札(う、つ、し、も、ゆから始まる札)のみ。
この二点さえ分かっていれば、とりあえずのところ大丈夫です。
そもそも、なぜこのような「共札」といった概念が出てくるのかというと、共札って同じ陣にあると決まり字が短くなるんです。これがたぶん共札の一番大きな特徴で、その特徴から送り札や自陣の配置、攻めがるたなどといったいろいろな話題に、この概念が顔を出す、というわけですね。
どういう風にそれらの要素とかかわっているのか、というのは各ページで紹介していますので、そちらをぜひご覧ください!
決まり字紹介
前置きがちょっと長くなりましたが、いよいよここから具体的な札の決まり字を紹介していきます。
今回は一字決まりと二枚札。初心者がまず最初に狙え! と教えられる札たちになります。二枚札は全部共札があるので、その辺も注意して覚えていきましょう。
※下の句を見て、決まり字が思い出せるような、覚え方をしましょう
※決まり字は、現代語に準じた読み方で記載しています
一字決まり
「む」
村雨の 露もまだひぬ まきの葉に 霧立ち上る 秋の夕暮れ
覚え方:きり(霧)=む(霧)
解説:二句目の「ひぬ」は、「干ぬ」とかき、そのまま「ひぬ」と読みます。決して「いぬ」と読まないように! 覚え方は漢字の音読みと訓読みを使ったもので、比較的覚えやすいんじゃないかな。後下の句が「き」から始まるのはこの歌だけなので「キム」とかで覚えるのもありかな笑。
「す」
住之江の 岸による波 夜さえや 夢の通ひ路 人目避くらむ
覚え方:夢は酢(ゆめ、す)
解説:”ゆめ”という非常にわかりやすい単語をキーにして覚えるといいんじゃないかな。「夢の巣」とか「夢は素が出る」とか… まあ、適当に。
「め」
めぐり会いて 見しやそれとも わかぬまに 雲隠れにし 夜半の月かな
覚え方:クモが「くれ、目!」(くもがくれ、め)
解説:覚え方はすごい強引だね笑 ほら、クモってなんか目がいっぱいあるイメージあるじゃん? その目が一個足りなくなって、目を欲しがる的な… 自分で言ってて意味わからなくなってきた… 下の句が「くも」から始まるのは他に2枚あるので、割と覚えるのが難しい札ではある。「よはのつき」というフレーズも他に使ってる札が一枚あるし… おとなしく「くもがくれ」と「め」をどうにかして結びつけるのがいいのかもしれない。
「ふ」
吹くからに 秋の草木の しをるれば むべ山風を 嵐というらむ
覚え方:むへ=ふ(むふむ)
解説:「むへ」(音はむべ)という単語が特徴的なので、これをキーに。これは現代語で言うと「なるほどなー」とか「そうだよねー」的な納得とか肯定を意味するんだよね。その気持ちとして「ふむふむ」的な擬音が割と当てはまるのではないかと思い、こういうこじつけにしてみたよ。古典の勉強にもなって一石二鳥だね笑。
「さ」
寂しさに 宿を立ち出でて 眺むれば いづこも同じ 秋の夕暮れ
覚え方:一個さ!(いつこ、さ)
解説:下の句が「いつみ」で始まる歌があるため、「いつこ」をキーにして覚える。「何個持ってるの?」「一個さ!」、「お名前は?」「逸子さ!」でも何でもいいけど、とりあえず元気に返事するイメージで… ちなみにさっき紹介した「む」の札と最後の句が全く一緒だよ。
「ほ」
ほととぎす 鳴きつる方を 眺むれば ただ有明の 月ぞ残れる
覚え方:ただの帆(たた、ほ)
解説:「ただ」ってのがいろいろなものにつなげやすくていい。何か自分の中で「ほ」とつながるものがあれば、それに「ただ(の)」ってつけて覚えるといいんじゃないかな。ちなみに3句目が「さ」の札と全く一緒だね。
「せ」
瀬を速み 岩にせかるる 滝川の 割れても末に 会わむとぞ思う
覚え方:割れた背中(われ、せ)
解説:一字決まりのラスト。背筋がバキバキに割れた人を思い浮かべましょう。
二字決まり
「うら」
恨み詫び 干さぬ袖だに あるものを 恋に朽ちなむ 名こそ惜しけれ
覚え方:口裏合わせ(くち、うら)
解説:「こひ」から始まる歌は他にもあるので、一行目の下にある「くち」をキーにするといいいんじゃないかな。「うら」ってのも合わせやすいし、比較的覚えやすい札だね。
共札:うか
「うか」
憂かりける 人を初瀬の 山おろし 激しかれとは 祈らぬものを
覚え方:うっかり、ハゲ(はげ、うか)
解説:決まり字語呂合わせ界のエース、「うか」の札です。「うっかりハゲ」のフレーズはかるたやってる人なら大体知ってるんじゃないかな。ただ、この歌の名誉のためにいっとくと、この和歌めちゃくちゃかっこいい歌だからね! ハゲの歌とかでは決してないから、そこらへんはちゃんと覚えておいてね!
共札:うら
月見れば 千々にものこそ かなしけれ 我が身一つの 秋にはあらねど
覚え方:つ(のあ)き
解説:真ん中の行に注目。「つのあき」の真ん中二文字を取ったら、決まり字の「つき」になるよね? それ以外にも「ひとつの月(ひとつの、つき)」みたいに、シンプルに覚えてもいいし。割と決まり字がなじみ深い言葉だったら、その札も覚えやすいね。
共札:つく
「つく」
つくばねの 峰より落つる みなの川 恋ぞつもりて 淵となりぬる
覚え方:ふちに着く(ふち、つく)
解説:先ほど「うら」のところでも説明したが、「こひ」から始まる札は何枚かある。そのため、真ん中にある「ふち」をキーにしてみたよ。「皿のふちに汚れが付く」みたいなイメージで覚えてもらえれば。
共札:つき
「しら」
白露に 風の吹きしく 秋の野は つらぬきとめぬ 玉ぞ散りける
覚え方:つら、しら
解説:「つら」という文字をよく見てみよう。「つ」を反転させ、回転させると…「し」になりました! だから、「つら」は「しら」です。実は、次の共札である「しの」と組み合わせると、この覚え方はさらに役に立って…
共札:しの
「しの」
忍ぶれど 色に出でにけり 我が恋は 物や思うと 人の問うまで
覚え方:もの、しの
解説:さあ、勘のいい人はわかったかな? 「も」という字から横棒を二本とってみると…はい、「し」になりました! だから、「もの」は「しの」。このペアはセットで覚えると楽に覚えれるんじゃないかなー 決まり字の覚え方でも、割と気に入っている覚え方です。
共札:しら
百敷や 古き軒端の しのぶにも なお余りある 昔なりけり
覚え方:あまりある桃(あまりある、もも)
解説:食べても食べきれないほど、余りある桃、そんなイメージです。他にも「あまりの桃」なんかでもいけるね。好きなワードで覚えてください!
共札:もろ
諸共に 哀れと思へ 山桜 花よりほかに 知る人もなし
覚え方:カニ汁諸々(かにしる、もろ)
解説:「はな」から始まる歌が他にもあるので、真ん中の「かにしる」をキーに覚えよう。最初は「カニは脆い」でいいと思ってたんだけど、次回出てくる「ひとは」の札が良く似ているんで「カニ汁」にしたよ。「カニ汁もろもろ含めてスープだ!」みたいな…
共札:もも
「ゆう」
夕されば 門田の稲葉 訪づれて 芦のまろやに 秋風ぞ吹く
覚え方:足湯(あし、ゆう)
解説:シンプルに下の句の最初の「あし」から「ゆう」に結びつく「足湯」で。「ゆ」の一字決まりと間違えるかもしれないけど、一字決まりは「むすめふさほせ」しかないから、その辺で判断しよう!
共札:ゆら
由良の戸を 渡る船人 舵を絶え 行方も知らぬ 恋の道かな
覚え方:行方わからずゆらゆら(ゆくへ、ゆら)
解説:迷子のイメージですね。割と歌の意味ともマッチングした覚え方なんで、いい語呂合わせなんじゃないかな。もし歌全体のイメージに合わせて「由良」って場所選んだったら、すごいよね。
共札:ゆう
おわりに
さて、決まり字紹介part1、いかがだったでしょうか? 何枚か強引なのもありましたが、その辺は、各自で分かりやすいように覚えてみてください。「こんな覚え方より、もっといい覚え方あるわ!」など思われた方はぜひ教えてください。確かにいい覚え方だわ、と思ったものは勝手に掲載するので(嘘です、ちゃんと断り入れます笑)。
次回は三枚札と四枚札の紹介! 三字決まり以上ががんがん出てきて、ややこしくなりますが、できるだけ覚えやすくなるよう紹介していくので、よろしくお願いします。