
競技かるたをしていると、たびたび耳にする「攻めがるた」と「守りがるた」。言葉の響きから何となく、どのようなことを指すかは想像できると思いますが、実際のところ、どういう意図で、このような分類がされているのでしょうか。
そういうわけで、今回は、「攻めがるた」と「守りがるた」についての、特徴と、特に初心者はどちらのかるたをするのが、おすすめか、などを詳しく解説していきます。
攻めがるた・守りがるたの意味
さて、ここで一番誤解されがちな、攻めがるた、守りがるたの意味するところを、最初に知っておいてほしい。
そもそも競技かるたで、私たちが目指すところはどこか、というと、それは場に並べられた50枚の札を相手よりも早くとること、これにつきます。もちろん、相手もそれを考えて札を取ってくるため、実際に50枚すべて相手より早く取れるということはほとんど無理だが、できるだけその目標を目指したい。
そこで初めて出てくるのが、攻めがるた、守りがるたといった戦略になります。
つまり、攻めがるたも、守りがるたも、できるだけ多くの札を取れるようにするための戦略という点では、本質的にいっしょです。その辺をまずはしっかり理解して、それぞれのスタイルについての特徴を見ていきましょう。
基本的戦略としての攻めがるた
と、その前に、競技かるたをやっていく過程において、だれもが学ぶある意味”常識”ともいえる事実を一つ確認しておきましょう。
それは、攻めがるた、守りがるたどちらのスタイルを取るにしても、自陣よりも敵陣を中心に覚える必要がある、ということです。
どういうことかというと… まあ、これは攻めがるたの特徴を見てもらった方が早いかな。ということで、一般的に言われている攻めがるたの特徴を確認してみます。まず、攻めがるたの主なメリットとしては、
(1)敵陣の札を取ると送り札をすることができるため、試合を有利に進めることができる。
(2)自陣の札は戻り手でカバーできる。
(3)覚えやすい自陣よりも、覚えにくい敵陣を集中して覚えることで、結果的に全部の札が取りやすくなる。
といった点があげられます。特にここで注目してほしいのが(3)の利点。
競技かるたにおいて、自陣の覚えやすさと、敵陣の覚えやすさを比較した場合、敵陣の方が圧倒的に覚えにくい。なぜかというと、自陣は毎試合自分が想定した場所に札を置くことができるのに対し、敵陣はある意味毎回ランダムに置かれるから。
そうなったときに、すべての札を相手より早く取ろうと思ったら、自陣と敵陣を同じくらい覚えるよりも、敵陣の方を集中して覚えた方が効率よくなります。つまり、攻めがるたはもちろん、守りがるたであっても自陣より敵陣を覚える必要があるというわけです。
そういった意味で攻めがるたというのは、ある意味競技かるたにおける、最も基本的な戦略とも言えることができます。
攻めがるたの特徴
さて、以上を踏まえたうえで、ここから本題の攻めがるたと守りがるたの特徴を解説していきます。まずは攻めがるた。
これはさっきの基本戦略としての攻めがるたをさらに極端にした感じで、具体的な暗記や意識の配分を示すと敵陣:自陣=9:1とか、9.5:0.5とかそんなレベルです。
そんな敵陣に集中して自陣取れるのか、っていうともちろん取れます。なぜかというと、敵陣の札に自陣の札をリンクさせて覚えることによって、敵陣の札を覚えると同時に自陣にある札もよみがえってくるから。
自陣は札があることさえわかれば、どう取るかっていう動きも自然に思い出すことができるので、ほとんど労力を割く必要がありません。どういうことかというと、競技かるたにおける暗記のコツでも紹介しているように、暗記というのは思い出す、という行為が大事になってくるのですが、自陣だと何回も同じところで同じ札を払っていますよね。だから、暗記の大事な要素である、思い出す行為を敵陣ほど必要としない、なので少ない労力で事足りるのです。
さて、そういった攻めがるたのメリットとしては、
・考えることがシンプル
・出札が偏れば、相手に何もさせないで勝てる
などといったことがあげられます。基本戦略をよりとがらせたスタイルなので、考えることはとてもシンプルです。そして、本来なら相手が得意なはずの自陣(こっちからしたら敵陣)の札をガンガン取っていくため、特に序盤で出札が偏った場合などは、比較的早い段階で勝負をつけることができます。
逆にデメリットとしては、
・出札が自陣に偏った場合の対策が必要
・負けてきて敵陣が減ってくると持ち味が生かせない
といったことがあげられます。やはり、敵陣を優先している以上、自陣に出札が偏ったときの対策は必要になってきます。送り札や、敵陣の札を取りこぼさない、などして流れを引き戻すことが重要になってくるでしょう。
守りがるたの特徴
これに対して、守りがるたは、基本戦略として、最低限の攻めがるたは維持しつつも、自陣の守れるところはしっかり取っていくという、どちらかというと、バランス寄りなスタイルになるのかな。具体的に言うと敵陣:自陣=8:2とか7:3とか。
ここで注意してほしいのは、守りがるただからといって、敵陣より自陣を意識することはありえない、ということ。そんなことをすると本当に敵陣が抜けなくなてしまいます(もちろん、終盤や局所的な戦術として、自陣を強く意識することは攻めがるた、守りがるた関係なくあります)。
守りがるたのメリットとしては、
・出札による影響が比較的少ない
・相手からすると、どの札を早く取るかわかりづらい
などがあげられます。比較的すべての札を相手より早く取っていくスタイルのため、どのような出札でも、ある程度対応ができます。さらに、敵陣だから早いとか自陣だから早い、みたいなわかりやすい特徴がないので、相手からしたらなかなかペースがつかみづらいところがあります。
逆にデメリットとしては、
・意識しなければならないことが多い
・爆発力にかける
といったところです。敵陣の札だけでなく、自陣の札もある程度ケアしたいスタイルなので、必然的に考えなければならないことは増えてしまいます。これは、長い時間戦うことになる大会などでは、大きなデメリット。
また、出札の関係で崩れることが少ない分、恩恵を受けることも少なくなります。うまくいかないときでも、ある程度の割り切りをもって試合に臨むことが大事になってきます。
攻めがるた、守りがるたおすすめは?
これまで、攻めがるた、守りがるたの特徴を解説してきましたが、じゃあ結局どっちがいいのでしょう?
結論としては正直どっちでもいいです。というか、最終的に目指すところは一緒で、できるだけ多くの札を相手より早く取ること、なので自分の性格や、得手不得手を自己分析して、足りないところを補っていくのがいいと思います。最低限の攻めさえできれば、あとは自陣も敵陣もそこまで関係なくなります。
ですが、初心者や、競技かるたを始めて間もない人たちは、ぜひ攻めがるたを目指してみてください。これはどういうことかというと、最初の方で書いた基本戦略としての攻めがるたを身に着けるためです。
競技かるたを始めたばかりのころは、自陣の方が早く取れるから、どうしても自陣に意識や暗記が寄ってしまいがちです。自分では攻めているつもりでも、上級者からしてみれば全然攻めてきてないな、と思われることもよくあります。
というわけで、攻めがるたと守りがるた、どっちがいいか、あえて言うならば、攻めがるたを目指していれば、間違いはない、ということになります。
まとめ
以上、攻めがるたと守りがるたについての解説でした。この記事本来は、攻めとか守りとかそんな分類いらなくね? という趣旨を伝えようと思って書き始めたんですが、あまりそんな感じは伝わってきませんね…
そうはいっても、競技かるた界隈では、攻めがるた、守りがるたという言葉はよく使われるので、一つぐらい解説記事があってもいいですね。特に守りがるたなんかは、「守りしかできないかるた」のことを指して使われることも、多々ありますし。
どこのかるた会でもとりあえず攻めがるたを教えると思いますが、それは往々にして、基本戦略の攻めがるたのことですので、守りがるたしたい人もその辺は飲み込んで、最初は攻めることをぜひ意識してください。