すごーく久しぶりに和歌解説の記事書きます!

 

競技かるたでは決まり字が途中まで同じ札を共札といいますが、前回解説した「あきの」の共札が今回紹介する「あきか」なんですね。

 

決まり字について気になる方はこちらの記事をチェック!

参照→競技かるたの始め方(3)ー決まり字って何なんだ?

 

そこで今回は、「秋風に たなびく雲の 絶え間より もれ出づる月の 影のさやけさ」という和歌の解説を行います。

 

前回の、「秋の田の かりほの庵の 苫をあらみ 我が衣手は 露に濡れつつ」の解説はこちらから!

参照→【和歌解説】秋の田のかりほの庵のとまをあらみわが衣手は露にぬれつつ

 

和歌の意味

「秋風によってたなびく雲の切れ間から漏れ出ている月の光は、なんと清く澄んでいることだろうか」

ことば

和歌に使われていることばの解説です。

たなびく

一応、現代語です。雲や霞などが帯のように長く引いているさまを言います。

 

『枕草子』の有名な「春はあけぼの」にも、「紫だちたる雲の細くたなびきたる」という文言が使われています。

絶え間

切れ間を意味します。

古文で影といえば、光のことを意味します。

 

現代語とのイメージが真逆なので、受験でもよく問われます。

さやけさ

漢字で清けさと書きます。

 

形容詞「清けし」を名詞にしたことばで、漢字のイメージ通り清らかで澄んでいるさまを表します。

 

このことばに限りませんが、漢字を覚えておくと古文の意味がイメージで記憶されるのでおすすめです。

文法

この和歌に関しては特に難しい文法はありません。ことばの意味さえ分かればそのまま訳せると思います。

 

しいて言えば、最後が名詞で終わっているため「体言止め」という技法を使っているぐらいでしょうか。

 

体言止めは現代でも使われる技法で、文末に名詞を置くことで余韻を表します。

 

和歌ではよく見られる表現で、百人一首にも降れる白雪、せぜの網代木、あまの釣舟、沖つ白波などなど多く登場します。

作者

作者は左京大夫顕輔こと、藤原顕輔(あきすけ)です。

 

藤原顕季(あきすえ)の末子でありながら、兄弟の中では最も歌道に優れていたらしく、顕季が大事にしていた人麿(3番あしびきのの作者)の絵を譲り受けています。

 

ちなみに、この人麿の絵は同じく百人一首に選ばれている息子の清輔(84番ながらえば)に伝えられています。

 

恋の歌はあまり詠まなかったそうですが、勅撰和歌集への採用率は高く、源俊頼(74番うかりけるの作者)が顕輔の恋の歌を絶賛したという記録も残っています。

鑑賞

この和歌は、崇徳院(77番瀬をはやみの作者)に収めるために作られた『久安百首』の中の一首です。

 

後に崇徳院から『詞花集』の編纂を命じられるなど、歌の実力は高く評価されていたようです。

 

この和歌には二句目が「ただよう雲の」となっているバージョンも確認されています。百人一首で「たなびく雲」が採用されたのは、そちらの方が力強く、作品のイメージに合うからだといわれています。

出典

新古今和歌集・秋上・413番

参考文献

吉海直人『読んで楽しむ百人一首』角川書店(2017年)

馬場あき子『馬場あき子の「百人一首」』NHK出版(2016年)

井上宗雄『百人一首を楽しくよむ』笠間書院(2014年)

上坂信男『新版百人一首・耽美の空間』右文書院(2008年)

有吉保監修『知識ゼロからの百人一首入門』幻冬舎(2005年)